仕事で神保町へ行ったので、ついでに「本の手帳」8号の原稿をとりに古書「玉晴」さんへ足を伸ばす。原稿と一緒に、広川松五郎:装丁、依田秋圃『山と人とを想いて』(東邦堂、大正12年)をいただいた。



広川松五郎:装丁、依田秋圃『山と人とを想いて』(東邦堂、大正12年
久しぶりに、広川松五郎の装丁本を入手したが、芸大の染織科の教授だった広川の装丁は、どれも魅力的でムラがなく、生真面目な性格が良く出ている。平成6年に作った架蔵する松五郎装丁本のデータでは40冊だったので、今は多分50冊くらいになっているのではないだろうか。ご遺族の方が松五郎伝のような本を書かれるというようなうわさ話を聞いたことがあるが、ご高齢だという話も伝わっておりその後どうなったのか、気掛かりだ。「練馬区文化財あんない」に「広川松五郎関係資料」として掲載されていたので、練馬区に問い合わせたときは、作品をだいぶ寄贈されたが、まだ手を付けていないので、資料は公開できないとのことだった。ネットでは「個人所有(練馬4丁目)<非公開>」となっている。


杉浦非水の展覧会で、与謝野晶子の話が数日前に途切れてしまい中途半端になってしまったが、杉浦非水も広川松五郎も晶子とは、装丁や挿絵で深いかかわり合いがある。



武井武夫:装丁、楽譜「ふくろう つばめ」(佐々木すぐる、昭和2年
とくに楽譜を集めているわけだはないが、武井武雄初山滋は大好きな絵本作家なので、作品を見付けるとつい購入してしまう。「玉晴」さんの机の上にあったので、つい。


木村荘八の装丁本は、だいぶ前からちょこちょこと集めていたが、話を書きだす切り口が見つからず、ただ集めるだけだったが、だいぶ集まってきたので、その内に書いて見ようかなと想うようになってきた。



木村荘八:装丁、村上元三『天馬往来』(大日本雄弁会講談社、昭和29年)


荘八は、1937年に私娼窟・玉の井を舞台に、小説家・大江匡と娼婦・お雪との出会いと別れを、季節の移り変わりとともに美しくも哀れ深く描いた永井荷風新聞連載小説で代表作ともいえる『濹東綺譚』の挿絵を描いた。この荘八による詩情あふれた挿絵は、作品の評価を高めた一因ともいわれ、挿絵家としての荘八の評判をも高めた。ほか、明治初期の横浜新開地を舞台にした大佛次郎の時代小説『霧笛』、『幻灯』、『花火の街』などの挿絵で知られている。



木村荘八:挿絵、大佛次郎「濹東綺譚」(東京朝日新聞、1937年〔昭和12年〕)



木村荘八:挿絵、大佛次郎「霧笛」



木村荘八:挿絵、船橋聖一「花の生涯


ブログを書いている最中だというのに、「木村荘八日記 明治篇―校註と研究」というバナー広告がついてきた。買いなさいということなのかな。