「実はさし絵の仕事を、よそうかと思ったこともあった。……『蛇姫様』その他、華麗な絵を描いて、ものの役に立たない絵かきのごとく扱われた口惜しさに、無理とはしりつつも兵隊の絵を描いて、戦争末期の昭和二十年には、陸軍報道部の命令で、『神風特攻隊吉出発』の絵を描いている。平然として死地におもむく、青年たちの群像をである。戦争することの是非はともかく、あの青年たちの姿には胸を打たれずにはいられなかった。それが、戦争が終ると、またもとのような華麗な絵を描け、との注文である。どうすればいいのだ! とおもった。」(『わが半生の記』)
岩田専太郎:画、「浙東作戦」(『靖国之絵巻』昭和16年10月)