文庫本なのに挿絵がたくさん記載されているのがうれしい角川文庫版、中里介山『大菩薩峠』全27巻


大菩薩峠』第1巻「甲源一刀流の巻」は明治45年(大正元年)、井川洗崖の挿絵を伴って都新聞の連載小説として始まった。新聞連載時の挿絵を見てみたいと思って探しているが、これがなかなか見つからない。


挿絵/井川洗突・野口昂明 他『大菩薩峠絵本 』(「第一 甲賀一刀流の巻より間の山の巻まで」 隣人之友社、昭11)が45,000〜47,250円で売られているがとても手がでない。


角川文庫の第1巻から第8巻の「禹門三級の巻」までが都新聞に連載されたもので、第9巻「無名の巻」からは、しばらく時間をおいてから東京日々新聞に連載される。


今回紹介する角川文庫版『大菩薩峠』に掲載されている挿絵は、新聞に連載された当時のものではない。おそらくは、この文庫版のために新たに描かれたものではないかと思われる。



挿絵:野口昂明、『大菩薩峠』第1巻



挿絵:野口昂明、『大菩薩峠』第2巻



挿絵:田中佐一郎、『大菩薩峠』第3巻



挿絵:正宗得三郎、『大菩薩峠』第4巻



挿絵:野口昂明、『大菩薩峠』第5巻



挿絵:光安浩行、『大菩薩峠』第6巻



挿絵:田中佐一郎、『大菩薩峠』第7巻



挿絵:向井潤吉、『大菩薩峠』第8巻


どうしてこんなにたびたび挿絵画家を変えたのだろうか? ここまでに既に5人の挿絵画家がバトンタッチをしている。読者は主人公の顔が変わってしまっても戸惑いはなかったのだろうか。私にとっては残り18巻でどれだけの挿絵画家が登場してくれるのか、新たな落款をハンティングできるので楽しみでもある。


挿絵としては面白いのかどうかはビミョ〜ですが、向井潤吉の絵はすごい。墨1色でもこんなにみごとに光の感じを表現できるものなんだ、と感心させられた。