八、本全集あれば一生涯退屈しない。


予約出版法による予約募集で、申込金一円(最終回配本充当)、その他の細かい規約があった(今日と違って、予約読者以外の一冊売りは原則としてしなかった。だから、奥付に定価の記入はない)。この計画は、不況乗り切り策である。改造社の山本実彦の大胆な賭博行為だと考えられていた。ところが、案に相違して、これが大当たりをとって、予約読者はたちまち二十三万セットにのぼった。のちには四、五十万セットを数えたというが、申込金が出版資金として大いに役立ったわけだ。