2010-11-06から1日間の記事一覧

大正15年11月締め切りの「現代日本文学全集予約募集内容見本」には、山本が漱石ファンであることを裏付けるように夏目漱石「坊ちゃん」の組見本が2ページ付されている。この内容見本が配られたのは8月ごろではないかとおもわれる。「坊ちゃん」が収録されている『夏目漱石集』第19編は第7回配本で、昭和2年6月発行なのである。常識的に考えれば、第一回配本の大正15年12月刊行『尾崎紅葉集』の組見本が使われるのが妥当であろう。なのに、大正15年8月に始まった予約購読者募集の内容見本に、なぜ「坊っちゃん」が選ばれたのであろ

紀田順一郎氏は『内容見本にみる出版昭和史』(本の雑誌社、1992年)で「…巻末に『坊ちゃん』の組見本を2ページほど付している。これは当初第一回配本予定が『夏目漱石集』であったことを物語っている。現実には翌昭和二年の第一回配本は『尾崎紅葉集』で漱…

改造社『現代日本文学全集』紙装並製本の普及版と夏目漱石『吾輩ハ猫デアル』(大倉書店、服部書店、明治38年)を並べてみると、どことなく造本が似ている。私の手元にある明治40年5月3日に発行された第5版は、天金がはげ落ち豪華さが失われているので、なおさら円本風に見えてしまう。が、実際は、地券紙本と呼ばれる表紙の芯紙に薄手のボール紙を使い、ページを繰りやすくしたもので、上製本である。

いずれも菊判で、白地を生かし朱色を基調色にし、束は約15ミリ。『吾輩ハ…』は表紙の芯ボールが薄手で、チリがなく突きつけなので、くるみ製本のように見えてしまうなどなど、多少、こうあってほしいと思うほうへと引っ張っているかも知れないが、観察すれば…