広告だから当然だろうが「現代日本文学全集内容見本」に「装幀と編纂の周到な用意」と題する造本装丁に関する自画自賛が。果たして字面通りに信用できるのだろうか。



第2回予約募集「現代日本文学全集内容見本」昭和2年


「装幀と編纂の周到な用意
本全集の装幀は、これまで最も苦心を費やし世に誇るべき自信を持てます。世間には、ちょつと見て美しく思はれるものもありますが、私達は、高尚な書斎の装飾、日本文学の内容との調和、その他を考慮して一流の図案画家にお願いし、専門家の意見を参酌して決定したものであります。


徒に欧風を模倣した他の安価な装幀と比較して其の価値を認めて頂きたい。体裁も四六判を避けて物資的損失の多い菊判を撰びましたのは日本文学の本質を形式的にも表現したい為めであり、且つ書斎に陳列して堂々たる美観たらしめんとしたのであります。


行文に製版印刷上最も困難とせられてゐる6号活字を用ひたのは内容の豊富を期するためであり、他に類なき総振仮名付としたのは、原著者及び其の時代の読み方を其の侭に伝へ且つ如何なる階級の読者も容易に読み得る便宜のためであります。そればかりか、各巻頭に著作者の昌三、筆蹟、書斎等の写真を飾り、巻末に著作年表、作品の解説をも加へました。これほど親切周到な編纂をした全集は他に類がないのであります。」と、あり


菊判を撰んだのは「体裁も四六判を避けて物資的損失の多い菊判を撰びましたのは日本文学の本質を形式的にも表現したい為め」としているが、そんな一面もあるだろう。


しかし、『現代日本文学全集』以降、菊判を選択する円本は殆どなく、四六判が主流となる。菊判では紙代などが高くなり、その分、装幀の費用を抑えるために紙装の並製本を選択せざるを得なかったのではないだろうか。その後の円本の多くが布装上製本を選択する中、『現代日本文学全集』だけが、見かけは、雑誌風の造本である。



当時一番売れていた月刊雑誌「キング」本文(大正16年2月)三段組は巻末の記事に使われることが多い。発行日が大正16年になっているが、12月末にはすでに2月号が発行されていたのだろう。


さらに、本文組を「6号活字を用ひたのは内容の豊富を期するため」とあり、確かに沢山の文字を組むことができる。が、6号活字3段組というのは、雑誌でもあまり使われることはなく、巻末に掲載される投稿記事などで使われる文字組様式であり、文字が小さく読みにくいように思える。