改造社『現代日本文学全集』紙装並製本の普及版と夏目漱石『吾輩ハ猫デアル』(大倉書店、服部書店、明治38年)を並べてみると、どことなく造本が似ている。私の手元にある明治40年5月3日に発行された第5版は、天金がはげ落ち豪華さが失われているので、なおさら円本風に見えてしまう。が、実際は、地券紙本と呼ばれる表紙の芯紙に薄手のボール紙を使い、ページを繰りやすくしたもので、上製本である。


いずれも菊判で、白地を生かし朱色を基調色にし、束は約15ミリ。『吾輩ハ…』は表紙の芯ボールが薄手で、チリがなく突きつけなので、くるみ製本のように見えてしまうなどなど、多少、こうあってほしいと思うほうへと引っ張っているかも知れないが、観察すればするほど類似点に見えてしまう。改造社社主・山本実彦が漱石ファンだったのではないかとさえ思わせる所以である。


左:夏目漱石『吾輩ハ猫デアル』(大倉書店、服部書店、明治38年)と、右:改造社現代日本文学全集』紙装並製本の普及版