またまた詩画集の話に戻ってしまったが、本日は、堀口大学:訳/ギョーム・アポリネール『動物詩集 叉は オルフェ様の供揃い』(求龍堂、1980年第2刷)、A4変形の大きな本だ。


あとがきにあたる「新訳縁起」には「先に第一書房からアポリネールのLe Bestiaire を『動物詩集』と題し、翻訳出版したのが1925年の12月だった。今から53年前のことになる。原作の初版は1911年、パリのドプランシ社から、ラウル・デュフィーの木版さし絵入り、百二十部限定で出版されていたが、何しろその後、数奇者の間で、二十世紀になってから世界中で作られた豪華本中、最上の出来映えだと取り沙汰され、コレクター垂涎の的となった稀覯本、僕なぞには見ることも出来なかった名のみの花、翻訳に使ったのは、1919年、パリの人魚書房から出た、原寸三分の二の縮刷版だった。


去年の11月、たまたま、初版原寸大のアメリカ版を見る機会に恵まれたが、なるほどアポリネール
ほめよ、たたえよ
線の気高さ、力強さ
と感嘆している30葉に余るデュフィーの木版画の見事さが、たっぷりしたひろがりによって、全く別のものに見えるのだ。アポリネールの詩の方も彼のいわゆる光の声なるデッサンの魅力との相乗効果で、また一段妙味なのだ。……1987年5月15日 大学老詩生」と、大判の初版原寸大のアメリカ版に触れたときの感激を書いている。



堀口大学:訳/ギョーム・アポリネール『動物詩集 叉は オルフェ様の供揃い』(求龍堂、1980年第2刷)



堀口大学:訳/ギョーム・アポリネール『動物詩集 叉は オルフェ様の供揃い』(求龍堂、1980年第2刷)


堀口大学でさえそうであったように、やはり、書物からの感動は、視覚からの印象のほうが強く、ビジュアルに神経を使った本は売れるものと思っている。手彩色の時代は勿論カラフルなミニアチュールと呼ばれるイラストや華やかな飾り罫や、手描きの文字など、華やかさに溢れていた。


印刷本に代わってからも、初めの頃は、みな華やかなオーナメントに飾られていた。日本でも、活版印刷がはじまった頃の本は、さし絵がたくさん入っていて、さし絵を見ているだけでも楽しめるようにつくられており、書物はディズニー・ランドのように、特別の準備(予備知識)がなくても楽しめるエンターテイメントだった。


それがいつの頃からか、活字に頼りすぎ、単に情報を活字に載せて送るだけの器になってしまった。書物のアミューズメント化だ。博物館は予備知識のない人でも楽しめるようには準備されていないのと同じように、活字だけの書物は、書かれている内容にあらかじめ興味を持たない人には、退屈な代物でしかないのだ。


このことが、書物離れを引き起こし、ひいては紙に印刷された本を窮地に追込むことになってしまったのではないだろうか。電子ブックのほうが、製作費用もかからず、著者印税が70%などといいことずくめのようだが、印刷がはじまってからだけでも500年以上の歴史がある紙の本を、出版人は見捨てないで欲しい。