神保町の小宮山書店ガレージセールで、豪華なコラボの詩画集、山下菊二:装丁・挿画/三木卓『わがキディ・ランド』(思潮社、1970年)、古沢岩美:装丁・挿絵/スチーヴンスン『新版千一夜物語』(鎌倉書房、昭和22年)、杉本健吉:装丁/柴田錬三郎『顔十郎罷り通る』(講談社、昭和38年)の3冊をまとめて500円で購入してきた。こんなに掘り出し物を見つけることは稀なので、気分は爽快、スキップをしながら帰宅した。



山下菊二:装丁・挿画/三木卓『わがキディ・ランド』(思潮社、1970年)



山下菊二:装丁・挿画/三木卓『わがキディ・ランド』(思潮社、1970年)
三木卓は、1967年に詩集『東京午前三時』でH氏賞、『わがキディ・ランド』は1970年に高見順賞受賞している。この後、三木は「ミッドワイフの家」で芥川賞候補になり、1973年に「鶸」で芥川賞を受賞(連作『砲撃のあとで』のうちの一編)し作家としても活躍を始める。


山下菊二(1919〜1986)は戦後の事件や差別などの社会問題を題材に、土俗的でシュールな作品を描いた戦後の日本美術を代表する画家。「権力や差別、天皇制や庶民意識の問題と向かい合い、渾沌たる現実を超現実主義の方法で戯画化したり、探訪絵画を創案して、事件を紙芝居化するなど、その絵画は、戦後史の証言ともなる重要なものである。」(フリー百科事典『ウィキペディアWikipedia)』)。
私が学生の頃、山下先生宅では、家の中に10匹ほどのフクロウを放し飼いにしている、という噂を聞いたことがあり、面白い人がいるもんだ、と思い、作品にも興味を持っていた。



古沢岩美:装丁・挿絵/スチーヴンスン『新版千一夜物語』(鎌倉書房、昭和22年)。
これって不思議な色調に見えたが、よく見ると戦後のどさくさに印刷されたために生じた、C版(青)の大きな版ずれのようだ。こんな版ズレは最近では校正刷りの段階でも見ることはなく、貴重な版ズレの資料ともいえる。よいものは保存されるが、悪い例はなかなか残されることはない。先入観というものはおそろしいもので、古沢岩美の装丁本だというだけで印刷ミスもシュールに見えてしまう。



杉本健吉:装丁/柴田錬三郎『顔十郎罷り通る』(講談社、昭和38年)
杉本健吉(1905―2004)は、吉川英治作(週刊新潮連載)「新・平家物語」・「私本太平記」等の挿絵で知られる洋画家。
1905(明治38)年9月20日名古屋市に生まれ、愛知県立工業学校図案科を卒業ののち、洋画家を志して岸田劉生(りゅうせい)に師事。国画会に出品、1938年(昭和13)同人となる(1971退会)。42年文展で特選、翌年佐分(さぶり)賞、46年日展で特選を受ける。


時代小説の挿絵は、どちらかというとリアルな絵が多い中、村上豊山藤章二のようなデフォルメされたコミカルな感じの絵も良いと思っていた。そんな矢先に見つけたのがこの『顔十郎罷り通る』だ。