33年目に購入できた憧れの本、木下杢太郎 百花譜百選』

 仕事の帰り道、神保町の古書街を歩いていたら、古書店の店頭の棚に『木下杢太郎 百花譜百選』(岩波書店、1983年)を見つけた。発売当初は定価24,000円で、とても手がでませんでしたが、欲しくて欲しくてたまらない本でした。そんな高価だった本がなんと驚くなかれ古書価1,800円で売りに出されていたのです。思わず手に取り、すぐさま購入してしまいました。諦めてから33年目で希望が叶いました。



 木下杢太郎(1885〜1945年)は画家でも装丁家でもありませんが、木版彫師・伊上凡骨と手を組んで創作された書物の装丁は見事なものばかりで、私が「美しい本」のコレクターになるきっかけになったのが杢太郎の装丁本でした。装丁のためのスケッチ集と思えないでもないこの本を買わずに素通りすることはできませんでした。



・木下杢太郎装丁、多色刷木版画小宮豊隆『黄金虫』(小山書店、 昭和9年)…ギボウシ



・木下杢太郎装丁、多色刷木版画、結城哀草果『すだま』(岩波書店昭和10年)…オモト。



・木下杢太郎装丁、木下杢太郎『雪櫚集』(書物展望社昭和9年)…ドクダミなど。



・木下杢太郎装丁、新村出『ちぎれ雲』(甲鳥書林昭和17年)…ビワとスズメ。
 『ちぎれ雲』を購入したときには、一面に描かれたビワの実と葉に感激していましたが、帰宅してじっくり眺めていたら、上の方にスズメが描かれているのに気がついた。そして、この絵の主人公はスズメなのかもしれない、と思ったときに、この絵の凄さに驚かされました。餌を見つけたスズメは見つかりたくないんですね。そんなスズメの気持ちを表現するために背景をスズメと同じ色にしたのかな?と。私はまんまと杢太郎の術にはまってしまい、心地よく騙されたのだ。



・木下杢太郎:画、与謝野晶子『心の遠景』(日本評論社昭和3年)…カナメモチ。