著者自装の可愛い手書き題字の本を除籍本に見つけた!

【除籍本の中に著者自装の可愛い手書き題字の本が!】



 近所の図書館の除籍本コーナーに手描き題字の本があったのでいただいてきた。写真左から
・著者自装、長野まゆみ『改造版少年アリス河出書房新社、2008年
・小川達彦:装丁、寺河俊人『幻の寺』春秋社、1970年
・題字:紺野慎一、イラスト:しりあがり寿、装丁:祖父江慎京極夏彦『南極(人)』集英社、2008年
がその3冊の内訳です。

 下の写真は全て『改造版少年アリス』の中扉です。



 著者自らが装丁するのを著者自装という言葉があるくらい、昔から多くの著者が自らの本を自らの手で装丁してきました。中でも谷崎潤一郎はよく知られておりまして「原則として自分の本は自分が装釘するに越したことはない。殊に絵かきに頼むのは最もいけない。どう云う訳か、絵かきは本の表紙や扉に兎に角絵をかきたがる。千代紙のようにケバケバしい色を塗りたがる。」(「装釘漫談」読売新聞、昭和8年6月)と、装丁を画家に依頼するのを嫌いました。とはいえ谷崎の著書には
小出楢重:装丁『蓼喰ふ虫』改造社昭和4年11月
・中川修造:装丁『卍(まんじ)』改造社昭和6年
・木下杢太郎:装丁『青春物語』中央公論社昭和8年
・中川修造:装丁『鶉鷸隴雑纂』改造社昭和11年
安井曾太郎:装丁『猫と庄三と二人のをんな』創元社昭和12年
など、画家が装丁した見事な装丁の本があります。

 谷崎の言うように著者自ら装丁した本ですが、谷崎には嫌われそうな「千代紙のようにケバケバしい色」の本『改造版少年アリス』もあるんですね。




 文字はキネマ文字風の装飾文字に小鳥や貝などが一緒に描きこまれており、読みやすくはないが、楽しくロマンチックな素敵な文字だと思います。文字の周りのカットやオーナメント(飾り罫)も女性の著者らしいモチーフが選ばれて描かれており、まゆみワールド醸し出しているのが魅力です。