中一弥には三人の自慢の息子たちがいる。『挿絵画家・中一弥』の中に何度もフルネームで登場する逢坂剛は、「僕は、逢坂剛と、一番長いこと暮らしました。彼が博報堂に入社して、昭和五十年の秋に結婚するまで、その間、ずっと一緒に暮らしていました。その頃長男は国鉄、次男は日本航空に勤めていて、すでに独立していました。」と書いているように、特に自慢の息子であったようだ。
『重蔵始末』では、中一弥待望の、三男・逢坂剛との初めての親子でのコラボレーションが実現。「逢坂剛も『重蔵始末』では、ずいぶん文献を調べたようです。近藤重蔵が火盗改をしていた時代の話ですから、どうしても池波さんの『鬼平犯科帳』と比較される。本人もそれを承知して書いているのでしょうから、その度胸は大したものです。」と、目を細める。
装画:中一弥、逢坂剛『じぶくり伝兵衛―重蔵始末(二)』(講談社文庫、2005年)
装画:中一弥、逢坂剛『猿曳遁兵衛─重蔵始末(三)』(講談社文庫、2007年)