中 一弥(なか かずや)一九一一年、大阪府北河内郡大和田村(現・門真市)生まれ。挿絵画家。一九二七年、十六歳のときに小田富弥に画才を認められ、弟子となる。一九二九年、直木三十五『本朝野士縁起』で挿絵デビュー。以後、七十年以上にわたって、『銭形平次捕物控』『夢介千両みやげ』『鬼平犯科帳』『剣客商売』『仕掛人・藤枝梅安』をはじめとする、数々の時代小説の名作に挿絵を描きつづける現役最長老の絵師。 吉川英治、野村胡堂、山本周五郎、山手樹一郎、山田風太郎、村上元三、海音寺潮五郎、司馬遼太郎、池波正太郎、有吉佐和子、


中一弥には三人の自慢の息子たちがいる。『挿絵画家・中一弥』の中に何度もフルネームで登場する逢坂剛は、「僕は、逢坂剛と、一番長いこと暮らしました。彼が博報堂に入社して、昭和五十年の秋に結婚するまで、その間、ずっと一緒に暮らしていました。その頃長男は国鉄、次男は日本航空に勤めていて、すでに独立していました。」と書いているように、特に自慢の息子であったようだ。


『重蔵始末』では、中一弥待望の、三男・逢坂剛との初めての親子でのコラボレーションが実現。「逢坂剛も『重蔵始末』では、ずいぶん文献を調べたようです。近藤重蔵が火盗改をしていた時代の話ですから、どうしても池波さんの『鬼平犯科帳』と比較される。本人もそれを承知して書いているのでしょうから、その度胸は大したものです。」と、目を細める。



装画:中一弥、逢坂剛『重蔵始末』(講談社文庫、2004年)



装画:中一弥、逢坂剛『じぶくり伝兵衛―重蔵始末(二)』(講談社文庫、2005年)



装画:中一弥、逢坂剛『猿曳遁兵衛─重蔵始末(三)』(講談社文庫、2007年)



装画:中一弥、逢坂剛『猿曳遁兵衛─重蔵始末(四)』(講談社、2009年)