落款集めをやっていると、ほんとにいい絵なのに落款がない絵がたくさんあり、私の蒐集データからは漏れてしまう。しかし、それでは、なんとも惜しい話なので、せめて一度ブログで紹介したい! そんな風に思ったのが池中三樹のこの一枚。



池中三樹/挿絵、『現代漫画大観』第8巻(中央美術社、昭和3年


恩地孝四郎(1891年7月2日-1955年6月3日)の挿絵は、『長編小説全集』等でたくさん見かけることができるが、落款をなかなか見つけられなかった。こうなると意地でも見つけてやれ〜、とばかりに、古書市で雑誌の挿絵などを探しまくり、やっとこさ見つけてしまった。




恩地孝四郎/挿絵、「家庭」(大日本婦人連合会、昭和6年


ねっ。昭和初期の雑誌挿絵としてはかなりアヴァンギャルドな挿絵でしょ。こんなモダンな絵が誰が描いた絵なのか判らなくなってしまってはもったいない、本人だってそう思ったに違いない。この落款があるというのは、恩地自身も気に入っていたという印なのだろうか。


同じ雑誌「家庭」に、恩地孝四郎の別の落款を見つけてしまったので、紹介します。複数掲載するとなると著作権の問題も気になりますので調べてみました。没後53年経過しているので、3年前に著作権がなくなっていた。



恩地孝四郎/挿絵、「家庭」(大日本婦人連合会、昭和6年


画風が違うので、落款も変えたのだろうか。それにしてもアルファベットの落款が下手すぎませんか? 普段から書いていないから思わぬ恥をかくんですよ、恩地さん。



フリー百科事典『ウィキペディアWikipedia)』には、恩地 孝四郎(おんち こうしろう、1891年7月2日-1955年6月3日)とあるが、恩地の版画には、「K.ONZI」との落款があり、「おんじ こうしろう」と読むのではないかと思います。ちなみに、若い頃は「恩地 孝(おんじ たかし)」と名乗っていました。