メデューサをモチーフにした和田英作:装丁「明星」最終号の表紙絵が意味するものは何なのか。なぜメデューサを表紙のモチーフとして選んだのか。画家は表紙の挿絵に一体どれほどの意味を込めて描いているのだろうか。興味深い。木股知史「『明星』の表紙画」(甲南大学紀要、2005年)での論考に耳を傾けてみよう。なおこの論文は木股知史『画文共鳴』(岩波書店、2008年)でも読むことができる。



和田英作:装丁「明星」(明治41年2月)


「終刊を迎える一九〇八[明41]年は、和田英作の「メブサ」が表紙を飾った。三色刷で、髪の毛が蛇となったメデューサを描いている。中村義一は『自然主義的傾向にむしろふさわしい表紙絵』と指摘している。それよりも、世紀末ヨーロッパで流行していたメデューサの画像は、『明星』の浪漫主義にデカダンスの気分が感染したことを示していると思われる。


和田のメデューサが翼を持っているのは、伝承でメデューサもその一員であるゴールゴーンが大きな黄金の翼を持つとされているからである。メデューサは、もとは髪の美しい女性であったが、女神アテナと美を競ったために、髪が蛇となり怪物に変身させられたのである。


画像の面から見れば、女神ヴィーナスが容貌魁偉(*顔やからだが人並みはずれて大きく立派)なメデューサに変貌したことは、『明星』のロマン主義が屈折したということを示しているように思われるのである。」と、単なる画家の思いつきの選択ではなく、明星の最後を象徴するものとして、メデューサが選ばれたのだろうということだ。