広川松五郎装丁、クレエビイル、小松耕輔訳『音楽の聴きかた』(目黒書店、大正9年9月初版、大正10年11月3版)

shinju-oonuki2006-02-15

 
広川松五郎の単行本の装丁としてはごく初期の傑作である。この頃の松五郎の装丁としては、室生犀星『抒情小曲集』(感情詩社、大正7年9月)があるが、復刻本もありこちらの方はよく知られている。
 
自費出版『感情』の表紙の装丁を手がけたのがやはりこの頃で、『感情』第2年第3月号表紙(大正6年3月)、『感情』第2年第4月号表紙(大正6年4月)、『感情』第4年第7月号表紙(大正8年7月)などの装画を提供しており、室生犀星との深い関わりがわかる。
 
『音楽の聴きかた』がどのような経緯で松五郎が装丁をするようになったのかに付いては、全く分らないが、興味があるので、これから調べていきたいと思っている。
 
松五郎は与謝野晶子との関わりもあり、この本の装画に見られる天使は、晶子の短歌集『みだれ髪』の中にも登場しており、明治末期から大正初期にかけては、西欧から輸入された人気の輸入キャラクターだったのだろう。背景の葡萄の蔓もアールヌーボー調であり、染織家としてアールヌーボーの研究をしていたこともうかがえ、研究熱心な松五郎の美術研究者としての一面ものぞき見ることが出来る装丁である。