広川松五郎装丁『青水沫』

shinju-oonuki2005-12-22

 
窪田空穂『歌集 青水沫」(日本評論社出版部、大正10年)は、久しぶりに見つけた広川松五郎の装丁本である。函や表紙のデザインも見事だが、今回は、木版画を使った見返しの図案の見事さを見ていただきたい。松五郎の本業は染織家であるが、多彩な人で、木版画や短歌も素晴らしい。
 
かつて、サービス停止で消えてしまったブログでも紹介したが、藤沢清造根津権現裏』(日本図書出版、大正11年)、山内義雄仏蘭西詩選』(新潮社、大正12年4月)、清見陸郎『寡婦マルタ』(改造社昭和2年12月)などなど、木版を使った見事な装丁を残している。
 
宮沢賢治春と修羅』(関根書店 、大正13年4月)も松五郎の代表的な装丁だ。与謝野晶子『街頭に送る』(大日本雄弁会講談社昭和6年6月)など,アールデコ調の装丁も手がけるなど、表現スタイルも多彩で、私は大正時代を代表する装丁家の一人だと思っている。