ギボウシをモチーフにした木下杢太郎:装画、小宮豊隆『黄金蟲』

私の田舎では「ウリッパ」とよぶギボウシ(写真1)。これを漏斗(じょうご)のように逆さ円すい形に丸めて谷間の水を飲んだ記憶があり、見るたびにいつもなつかしい幼い頃の田舎の風景を思いださせる。
写真1》


 私が古い装丁に興味を持ち始めたのも、このギボウシを表紙絵のモチーフにした木下杢太郎:多色摺木版画伊上凡骨:彫刀)、小宮豊隆『黄金蟲』(小山書店、 昭和9年、写真2)との出会いの感動からはじまった。
 杢太郎は大学医学部の教授であるが、幼い頃から画家への憧れがありその描き出す絵には植物に対する愛情があふれており『百花譜』(岩波書店、1979年)などの画文集があほどで、図鑑とは一味違う絵を紡ぎ出している。

写真2》木下杢太郎:多色摺木版画伊上凡骨:彫刀)、小宮豊隆『黄金蟲』(小山書店、 昭和9年