明治期の挿絵が文学と接近していく様子を匠秀夫「小説と挿絵」(『日本の近代美術と文学』(沖積社、昭和62年)に見てみよう。


「明治期における雑誌・書籍を概観すると、まず読本の挿絵では、江戸末期の黄表紙、赤本、黒本など、総じて絵双紙といわれたように、かなりの来歴を持っている。さらに、山東京伝の案出になるといわれるが、絵双紙の中から、『巻中の主要人物等々の巻頭に掲げ示す」口絵もそのまま引き継がれて、明治に至るのである。


明治初期の読本類の挿絵は幕末以来、変わることなく浮世絵師の仕事であり、今日珍重される明治版画の名家小林清親やその弟子井上安治、小倉柳村なども『板下絵師』の名でそうした仕事をしていた。