仕事で神保町に出掛けたついでに古書市や、小宮山書店ガレージセール等にも寄ってきた。里見勝蔵『赤と緑』(昭森社、昭和17年)、北原白秋『雀の生活』(新潮社、大正9年)、木下杢太郎『蕨後集』(東光閣書店、大正15年)等を400円で購入。



里見勝蔵『赤と緑』(昭森社昭和17年)著者自装
この装丁の圧倒的な強さと印象深さは、どうです、すごいでしょう。それもそのはず、里見勝蔵といえば、東京美術学校在学中の1917(大正6)年、第4回二科展と第4回院展に初入選。1921(大正10)年、フランスにわたりフォーヴィスムブラマンクに師事。帰国後、二科展で樗牛(ちょぎゅう)賞、二科賞を受賞。1926(15年)、佐伯祐三(さえき‐ゆうぞう)らと「一九三○年協会」を結成し、1930(昭和5)年、林武(たけし)らと独立美術協会を創立。戦後は国画会会員。フォーヴィスムの生々しい息吹を日本に伝えた一人といわれ、明暗の強い対比を見せる表現で“日本的フォーヴ”の運動を主動したすごいキャリアの持ち主だ。


以前から気になっていた本だったが、3000円〜4000円出してまですぐに買わなければならない本ではなかったので、購入しなかったが、400円なら取り合えず買いだよね。



北原白秋『雀の生活』(新潮社、大正9年
この本は装丁が気に入った訳ではない。最近、鴬の餌付けをやっているからといって、『雀の生活』にも興味を持ったのでもない。文字です。このキネマ文字風の題字がいいですよね。大正末から昭和初期に映画が黄金時代を迎え、キネマ文字が作られる前に、この創作文字をデザインしたことがすごいと思いませんか。ですからこの文字はキネマ文字ではなく、創作装飾文字なんですね。


北原白秋『雀の生活』(新潮社、大正9年)別丁前扉(左)、章扉(右)
この別丁前扉はデザインも文字もモダンで美しいし、章扉の文字も感性豊かなほれぼれするほどのいい文字を創作している。それなのに、この文字を書いたデザイナー(タイポグラファー)の名前が判らない。何とも残念な話だ。この当時の新潮社の本は、装丁家名を記さない本が多く装丁資料としては不完全だ。



矢島周一『図案文字大観』(彰文館書店、昭和14年)、初版は1926(大正15)年に刊行されたので、ごく初期の書体集といえるだろうが、『雀の生活』のタイトル等はこの書体集の刊行よりも前に描かれている。



木下杢太郎『蕨後集』(東光閣書店、大正15年)
この本も、装丁家名が判らない。箱の絵にサインがあるが、もしかして木村荘八? 木村荘八のサインは「木描」等と書くので、それらしく見えるがどうだろう。



河野通勢:装丁、北原白秋『花樫』(改造社昭和3年
河野通正の話は、まだ書いた事がないが、だいぶ前から興味を持っていたので、通勢装丁本はかなり集まってきている。資料もあるので書けそうなのだが話を書くきっかけが中々つかめないでいる。今回の表紙の絵は、別の装丁でも見たような気がする。この本は300円。