内容は全く判らずネットで購入したのだが、『昭和挿絵傑作選 大衆小説篇』には岩田専太郎、小田富彌、志村立美、小林秀恒、小村雪岱の絵が掲載されている。『昭和挿絵傑作選 少年少女篇』には、山口将吉郎、伊藤彦造、樺島勝一、高場宅華宵、蕗谷虹児、加藤まさを、中原淳一が登場する。
どうしてこんな人選なのか、石井鶴三、木村荘八、河野通勢、鰭崎英朋、竹中英太郎、斉藤五百枝、橘小夢、神保朋世、梁川剛一などの立場はどう考えているんだ、といいたくなるが、ま、そのかわり一人一人がたっぷりと紹介されているからヨシとしようか。とりあえず小田富彌、伊藤彦造が入っていたので、ほっとしています。雪岱の頁も充実しています。それにしてもさすがに挿絵黄金時代といわれるだけあって、今回登場した挿絵家も、しなかった挿絵家たちも、この時代にはすごいメンバーがそろっていますね。
小田富彌、『丹下左膳』の項目には、今まで見たことのない挿絵が入っているのも嬉しい。新聞小説その物があれば問題は解決するのだが、新聞に掲載された丹下左膳のさしえを全部眺めてみたくて、こんな遠回りとも思える方法で挿絵を集めている。国会図書館に行けば全部コピーしてくれるのかな?
挿絵:小田富彌、『丹下左膳』
挿絵:小田富彌、『丹下左膳』、どうです、このサディスティックな迫力は。でも、これを痛快と言えますか? フィクションとはいえ殺人の現場ですからね。何とも生々しいですよね。こんなのが受けていたんだから正にサディスティック集団ヒステリーだよね。
秋葉原や荒川沖の連続殺人事件の様なことが、公然と行われていた様なものだとおもうと、それを拍手で迎えるような昭和初期の時代劇ブームとは異常な現象だったのではないでしょうか。昭和30年代だったか?
挿絵:小田富彌、『丹下左膳』
挿絵:小田富彌、『丹下左膳』、これは左膳ではありません。右手で深編み笠を持っているし、黒襟でもない。よく似たキャラクターが登場するとところが、チョットややこしい。実はこの人物こそが『新版大岡政談』の主人公で、海上のいかだの上に伏せて、波間に消えていく左膳の最後を確認する男なのだ。