ブックデザイナーが発行する本の雑誌

●ブックデザイナー、意地と執念の装丁



今回の表紙のようなオブジェを使った装丁は、本業の装丁の仕事では全く使用されたことがなく、ほとんどが自費出版の『紙魚の手帳』などに使われただけだ。田中栞さんの『古本屋の女房』のときも、オブジェを使った装丁案も提出したが、あえなく10対0で完敗したと言い伝えられている。その後『出版白書』で敗北、昨年暮れにも『勉学術』(ディスカバー21)でも敗北。時間をかけて制作しても徒労に終わってしまう。


このオブジェを作るようになってから、これまで20年近く商業出版物の世界では拒否され負けつづけている悲劇のヒーローのような装丁技法で、装丁界の「はるうらら」だ。


それでも私は、何とか日の目を見せてあげたいと、拙著『装丁探索』〈平凡社、2003年)では、著者の権限を発動し、この哀れなオブジェを使う装丁を採用するように版元に強要し、誕生以来はじめて、晴れて書店に顔を出す事が出来た。


世間はなかなか認めてくれなかったが、いざ採用されてみると、思いもかけず、この装丁がその年の装丁賞を受賞し華々しいスタートとなり、デビュー早々メジャーへの道が開かれた!と、私の装丁家としての未来はばら色に輝き始めた。


と、思いきや、その後はさっぱりで鳴かず飛ばずでまるで「ひろしです」のようです。1曲だけで消えていく歌手のように一発屋で終わってしまうのではないかと心配と不安の日々を送る中、背伸びせず「自費出版でやってみよう」と思い、このオブジェ装丁技法を育てるために、万全の策を練り、本の手帳社の社長も編集長も引き受けた。全ての権限を手中に収めれば、反対もなくすんなり書店に並べる事ができるはずだ。そんな裏取引と下心に支えられこのオブジェは「本の手帳」2号の表紙に採用されるにいたったという、悲しいくも哀れな表紙の物語が隠されています。

●「本の手帳」創刊2号が発売開始!
正月返上で作っていた「本の手帳」創刊2号がやっと配本できることになり、昨日は午前中、定期購読者の住所用のラベルを作り梱包作業。メール便でとりあえず定期購読者に発送を完了。


午後からは神保町の書肆アクセス東京堂書店、呂古書房に直接行って届けてきた。「古書通信」の樽見さん、「彷書月刊」の田村さんにも1冊とどけ、ご挨拶してきた。


出版ニュース社」の清田さんには郵送で失礼した。今日は、仕事が終わってから帰宅途中の新宿「模索舎」、高円寺「茶房高円寺書房」へ届ける。休日を利用して、執筆者への献本、評論家などへの献本を送るなどなどまだまだ気を抜けない作業が続く。


行く先々で、ご好評をいただき、書肆アクセスの畠中さんは「これならあと50部追加しても売れちゃいそうね」といいながら、話も終わらないうちに平台に積み上げてくれた。


彷書月刊」の皆川さんは、「単行本になりそうな内容ですね!」「雑誌とはいえ、マットPPで材質へのこだわりが感じられますね」と絶賛してくれた。


●限定1000部、定価1000円+税(送料80円)、A5判62頁
今回は、15日「古書通信」、25日「彷書月刊」に広告を出すが、広告が掲載される頃には、版元在庫ゼロなんてことに……なっていたらうれしいんだがなあ。雑誌なのに限定1000部しか発売しない、限定番号はないがいわば限定本だ。執筆者の飛鳥さんは、いきなり50冊も購入してくれたし……。


●私も櫻井書店の話を12ページも書いた。編集長の職権乱用でこれは8人の執筆者中、最大頁数だ。今まで書かれてきた櫻井書店の話には全く出てこなかった櫻井が春江堂にいた頃に作った書物の写真が2点はいっているなど、今までにない櫻井書店の話になっているのが売り。稲垣足穂の著書が桜井から出版されているのは、意外だった。

ご購入は FAX.03-3225-0957
またはメール md9s-oonk@asahi-net.or.jp
まで、お申し込みください。振込用紙を同封してお送りいたします。