斬新!非水「みだれ髪歌かるた」2

shinju-oonuki2006-09-26

明星(明治37年正月号)に掲載された、非水画「みだれ髪歌かるた」のもう1点を見てみよう。
 なにとなく君に待たるゝこゝちしていでし花野の夕月夜かな
という歌に絵をつけたものである。

構図といい、色使いといい、モチーフの選択といい、
かなり欧風なイメージを取り込む事に腐心している事がわかる。
このような華が乱れる野原が明治の日本にあったとは思われない。

この札の最も印象的な色である、手前にあるオレンジ色の花も、
これと全く同じものを探す事は出来なかったが、
「Art nouveau Desighs in Color」(Dover 1974年)のような花の資料が、
1900年パリ万国博覧会から帰国した黒田清輝の土産の中にあったものと思われる。

構図に関しても、この札の絵のように手前に大きな花を配置して、
その間から背景が覗かれるような構図は、
それまでの日本の絵画には見られなかったもので
E.M.Lilien(『世紀末の装飾 下』マール社1984年)の絵にも見られるように
アールヌーボーの特徴的な遠近法である。

しかし、遠景の中に描かれている黒い牛は、どんな意味があったのだろうか?
恋人が待っているような気がして野原に出てきたのは、牛?