杉浦非水装丁「中学世界」

shinju-oonuki2006-09-08

杉浦非水が装丁した本を集めている。特に明治時代に装丁したものを。

なぜか? って。非水は明治45(1912)年に、「装幀、雑誌の表紙図案展」を日比谷図書館で開催している。これは日本で開催された初めての装丁展といわれている。しかし、その詳細はあまり知られていない。

だいぶ調べたつもりなのだが、この展覧会に一体どんな作品が展示されていたのかさえわからない。当時の事だから図録があるとは思えないが、出品作品一覧のようなものがないものか、とささやかな期待を込めて探している。それがみつかれば、「装幀、雑誌の表紙図案展」を再現することができるんだがなぁ。

今日掲載したのは杉浦非水装丁「中学世界」第10巻7号(博文館、明治40年)。この絵のタッチはアールヌーボー調の「明星」表紙絵や与謝野晶子『乱れ髪』の装丁で装丁界の話題を独り占めした藤島武二か? とも思われるようなもので、非水にしてはアールヌーボーまんま取り入れで、らしさが感じられない。それでも好きな装丁ですがね。

それにしても明治40年にハープのモチーフってのはすごいよね。実物のハープを見たことあるのかな? まだまだ江戸の匂いの強い時代なのに。たしか明治37年の「明星」正月号付録の「乱れ髪カルタ」にもハープの絵はあったよね。非水の西洋かぶれの時期だ。

表紙のサインは、○の中に「非」となっているが、目次には「非水」ではなく、「表紙 杉浦朝武」となっている。

この本には、豪華な口絵がたくさん付いていて、本文中の挿絵も、岡野栄、小林鐘吉、橋本邦助、竹久夢二、大堀新之助、宮崎與平、宮川安信、岡田毅、北村重樹、木下茂などの豪華な挿絵家が競っている。夢二は洛陽堂から明44年に「夢二画集 春の巻」を発売したばかりで、有名になり始める頃の挿絵画見られ、ライバルと目された與平の挿絵もたくさん掲載されている。

おそらくこの装丁も出品されていたのだろう、などと想像していると心底楽しくなってしまい、非水装丁本の蒐集を充分に堪能させてくれる。