阪井紅兒装丁「続百字文選」

伊藤銀月『続百字文選』(如山堂、明治37年)は高円寺の古書市で見つけた本だが、特に購入したい本ではなかった。それでも明治の本ダシ、表紙の絵とサインが気になり500円なのでとにかく購入しておいた。

帰宅して、サインが誰のものか調べたがさっぱりわからない。この三重塔のようなサインは一度見た事があれば絶対に忘れない、かなり特徴のあるサインだ。本の隅から隅まで調べていたら巻末の広告に、表紙のサインと同じようなサインを見つける事が出来た。まさに「おやや〜っ? これはっ??」って感じだ。もそかしたら、もしかするかも。

まてまて、それだけではない。広告文中には「紅兒画伯筆表紙及挿画」とあるのを発見。やった〜ぁ、これは間違いない。よくぞ巻末広告にサイン入りの挿絵を掲載してくれた。昔の編集者よ、あっぱれであるぞ!!

もう、うきうきしてきて、小躍りするしかないぞ〜。まるで歴史的な大発見でもしたかのようなはしゃぎようだ。「オレの手は黄金の手だ! 具眼がそなわってきたんだ。」などと独言をつぶやく。これは病状があらわれ始める兆候でもある。

「紅兒」というのは阪井紅兒に間違いない。そう思って表紙のサインを再度確認するとまさに「紅」というサインに見えてきた。最初は塀越しに見える五重の塔かとも思っていたので、これが文字だなんて考えもしなかった。サインにウサギなどの絵を使う事もあるので、これもその類いかと思い込んでいた。