このミステリーじみた話も、じきに謎が解けた。

改造社版の序に「この本は最初大正十三年春友人内山理三氏にお頼みして玄文社から出させていたゞいたものでございます。ところが不幸にして玄文社は一時解散の止むなきにいたりましたので、この本もその後絶版のまゝになっていたものでございます。このたび内山氏の紳士的な寛大な御同意を得まして、改造社の手によって新たに版を改めてださしていたゞくことにいたしました次第でございます。」とあり、改造社が引き継いで出版したのである。
 
本文組を見ると、どちらも全く同じ組版で印刷しており、改造社は玄文社から紙型を譲りうけることで、新たに文字を組み直したりせずに、紙型から起こした組版を使って印刷している。そのため、殆ど同じ組みになっているのではないかと推察する。