斉藤佳三装丁『女詩人サッフォ』


かつて斉藤佳三(1887−1955)については、山田耕筰とともにドイツ留学から帰国するときにシュトウルム社・ヴァルデンから前衛美術の画家たちの作品約150点を預かり持ち帰り、そのうちの約70点の版画を展示したシュトルム展を大正3年に日比谷『DER STURU木版画展覧会』で開催した人物として紹介したことがある。


その後、斉藤については、ほとんど調べることもなく忘れかけていたが、駒沢大学・純粋芸術至上文芸学会での講演『前衛美術運動の日本上陸と装丁への応用」のおりに受付の女性から、東京芸術大学での「斉藤佳三の軌跡」展の情報をいただき、早速12月17日の最終日に観に行ってきた。


斉藤は美術、音楽、工芸、デザイン、舞踏、演劇、文学など広範囲に活躍したスーパーマンであることがわかった。東京音楽学校師範科に入学、文学、思想、舞台などに興味を持ち、やがて東京美術学校図案科へ入学。ドイツへ留学しベルリンで表現主義や総合芸術の動向を吸収してきた。帰国してからは、生活と芸術の統合を目指して主に応用美術の世界で活躍した。


会場には、舞台美術、染め物、ポスター、テーブル、イス、飾り窓、レコードジャケットなどさまざまなジャンルにわたる作品が展示されていた。

そんな中、数は少ないが装丁作品も展示されており、その中の1冊、法月歌容『女詩人サッフォ』(日星書院、大正14年1月初版)を購入してみた。赤い布装の表紙にアールデコ風の挿画を金箔押しした、いわゆるモダンデザインの見事な装丁だ。