本文は片面刷り二つ折り

  
さらに、この本文はなんと洋装本であるにもかかわらず、和本のように本文紙は片面刷り二つ折りなのだ。更に和本と違って山折の部分が背になっており、小口側は、ぺらぺらと開くようになっている。そのため、見開き毎に真っ白な頁が交互に登場するのである。つまり、開いたときの蝶々が飛び立つように見える胡蝶本のようなものである。城市郎『発禁本曼荼羅』には「斎藤昌三第八随筆集で、昭和二十五年一月一日、芋小屋山房から限定三〇〇部として刊行されたもので、ある。表紙は古紙型装胡蝶綴、題簽の鉛板を表紙左上に嵌入、原稿貼付外函入、菊変型判」とあり、初心者には、なかなかわかりにくい詞の羅列だが、的確に言い表している。
 
こんな装丁、冗談もいい加減にして欲しい、と書物は読むものとだけ考える一般人なら怒り出すところだろう。しかし、私には嬉しい仕掛けなのだ。これだからこそ斎藤昌三の限定本といえるのである。正に戦前から続く前衛的装丁の代表作といえる作品である。