杉浦非水装丁、菊池幽芳『百合子』は2種の装丁で発行

杉浦非水装丁本の架蔵リストをつくっていたら、思いがけないおもしろい本を見つけた。画像は2点とも杉浦非水:装丁、菊池幽芳『百合子』(金尾文淵堂、大正2年10月)で、同じ本の色違いだ。最近はこのような1点の書物を数種類の装丁で発売する企画を見かけるが、こんなことが大正時代に行われていたに驚かされた。


 10年ほど前の林望さんの講演会で、1冊の本に数種類のカバーを用意しておいて、好みのカバーを選んでオンデマンド印刷機でその場で印刷してもらえるようになるのではないか? と質問したら「あり得ない」と即座に否定されたことがある。近世書誌学者に未来が読めるのか? と腹立たしい思いをしたことがあるが、今となっては実現可能な、いいアイディアだと思いませんか。