ドクダミをモチーフにした装丁、木下杢太郎:画、著『雪櫚集』

マンションの北側にある幅3mほどの緑地帯にドクダミが密生している。毎年きれいに草刈りが行われているが、毎年たくましく生えてくる。それを毎年篭いっぱいに摘んでいる人がいるが、ドクダミ茶でも作るのだろうか。


ドクダミの名称は「毒矯み」(毒を矯める〈抑える〉)から来ているらしく、十薬(じゅうやく)という生薬として利尿作用、動脈硬化の予防作用などの効用があるという。名前がドクドクしく臭いが強いので嫌われているが、よく観察すると白い十字形の可憐な愛しい花をつける。


 そんなドクダミを描いた高雅な装丁の木下杢太郎:画、著『雪櫚集』(書物展望社昭和9年)は自著に木版画を用いた唯一の本だ。


 装丁に関して「仙台にゐた時は閑が多く、しばしば庭の野草木を写生した。そこに越してくると、想ひがけぬ木の芽、花の蕾が時々に姿を現はし目を喜ばした。昭和九年の拙書『雪櫚集』は半ば其庭の写生文を集めたものであり、其本の表紙にも自ら庭の一部を写して之に当てた。どくだみとちどめぐさをあしらつたものであるが、思ふやうに刷り上がらなかつた。」(木下杢太郎「本の装釘」昭和17年)と記しており、版画の出来が思うように行かなかったようで、採点は辛い。