学生の時に読んだ武田泰淳『富士』(中央公論、1971年)、谷川雁『戦闘への招待』(現代思潮社、 1961年)の装丁が司修氏の手になるものだったのがきっかけで、司氏への興味を持ち、以後、司修『紅水仙』(講談社、昭和62年)、司修『描けなかった風景』などの自著自装にもおおいに感化され、いつかは自著自装の本を作ってみたいというのが、私の夢になった。



司修:装丁、武田泰淳『富士』(中央公論、1971年)



著者自装、司修『紅水仙』(講談社、1987年)



著者自装、司修『本の魔法』(白水社、2011年)


画家であり、装丁家であり、作家でもある司は装丁家になりたいと思っていた私の目標になった。銅版画や水彩画を勉強し、オブジェ作りにも夢中になり、文章を書くことにも興味を持ちずっと司を追いかけてきた。その間、集めた司修装丁本は優に100冊を越えた。講演会にも足を運んだが、質疑応答では言葉を発することも出来ずに、遠くから見守るだけで嬉しかった。拙書『装丁探索』にも「司修」という項をもうけオマージュを書きつづっている。


そんな司修氏の『本の魔法』が大佛次郎賞を受賞した。また一歩遠くに行ってしまったが、追いかける楽しみも大きくなった。