ゲテ本にはめっぽう弱い

先週神保町の古書会館で
山内金三郎『甘辛画譜』(龍星閣、昭和31年)
をみつけると、居ても立ってもいられずとうとう購入してしまった。表紙が板でできており、そこに版画をすり込んでいる。


「金」の落款があるので著者自装のようだ。奥付に「手摺木版……アダチ木版研究所」とあるが、まさか板に木版で刷ったはずがない。かといってシルクスクリーンでもない。木目の中までしっかりと色が入っていて手彩色のようにも見えるが、色の縁にマージナル現象が見られるので、あるいはゴム版画かもしれない。装丁についての説明はどこにもない。



著者山内金三郎は、「主婦の友」の編集長であり、後に銀座に古書「吾八」を開店する。そのうちこの店を今村秀太郎にまかせ、自身は大阪に行き、阪急百貨店古書部・梅田書房を開店する、等の経歴を持つという、知る人ぞしる伝説の人物のようで、画家でもあったようだ。


この本は、全国のうまいものを紹介する金三郎の画文集だが、うまいものといっても、甘いものが多く、金三郎の舌には「ちょっと、ちょっと」と首をかしげたくなる。