岩田専太郎の大型画集『おんな 岩田専太郎画集』(毎日新聞社、昭和46年)、『岩田専太郎さしえ画集』(毎日新聞社、昭和51年)2冊を持っているが、本日とうとう業を煮やして3冊目となる『岩田専太郎名作画集』(毎日新聞社、昭和49年)を購入してしまった。なにをそんなに焦っているのかって? 「西海道談綺」のさし絵がなかなか見つからず、清水の舞台から飛び降りるつもりで購入するに至ってしまった。B4判二重函入で、新刊本の定価は30,000円もした。こんな豪華な本を昭和46年、49年、51年と3回も刊行できると云うのは


本日は、川口松太郎岩田専太郎が二人三脚で取組んだ「西海道談綺」を紹介しようと思っていたが、さし絵が見つからず、取り合えず「獅子丸一平」(毎日新聞夕刊、昭和29年8月〜31年9月)を紹介しよう。
「昭和20年代の初期は、時代物は封建思想を助長するものとして米軍総司令部の禁止命令によって逼塞(ひっそく)させられていたが、それも長いことではなく、間もなく再び時代物〈小説も映画なども〉は復活した。そして二十年代末期から三十年代初めにかけては『剣豪小説』がとくに一般に受け、剣豪ものブームをひき起したことは、まだ記憶に新しいところである。」(『岩田専太郎さしえ画集』)



岩田専太郎:画、川口松太郎「獅子丸一平」(毎日新聞夕刊、昭和29年8月〜31年9月)



岩田専太郎:画、川口松太郎「獅子丸一平」(毎日新聞夕刊、昭和29年8月〜31年9月)



岩田専太郎:画、川口松太郎「獅子丸一平」(毎日新聞夕刊、昭和29年8月〜31年9月)



岩田専太郎:画、川口松太郎「獅子丸一平」(毎日新聞夕刊、昭和29年8月〜31年9月)
「はげしい動きの一瞬が、群像を描かずして群像の動きを躍動させているところなど、僅かな刀の切先だけを描いて、激動する場面の緊張感と空気の動き、風を切る音まで描き出している。こういう見えないものまでを表現するのは、俳句の『ひびき』『におい』『かるみ』『わび』の文字面以外の表現力に通じる浮世絵のお色気、いきといった江戸の伝統である。」


「こういう心理描写、雰囲気の表現といった伝統の分野では、彼は広汎な場面や人間社会の多様性に作家の側から対決を迫られてくるだけに、きわめて新しい分野を無限に開拓していった。」


川口松太郎の『獅子丸一平』…では、ごく自然なまともな人間を描いていて、しかももそれがどこまでも動いてゆく、そういう雰囲気を発散している。少年も女も侍も、後ろ姿、群像、僧衣の男、そういう人間が、何れも飛び出して行ったり、強烈に私達の目を撃つ。…(*上記のさし絵)侍の目などそれははげしい悪意がつたわってくる。」(『岩田専太郎さしえ画集』)



岩田専太郎:画、川口松太郎「獅子丸一平」(毎日新聞夕刊、昭和29年8月〜31年9月)



岩田専太郎:画、川口松太郎「獅子丸一平」(毎日新聞夕刊、昭和29年8月〜31年9月)