完売御礼! 本日、「本の手帳」のバックナンバーの注文があり調べてみたら、創刊号と6号が完売しました。ありがとうございま〜す。

昨日は「師・夢二が憧れた前衛美術家・恩地孝四郎の装本」を講演してきた。パソコンでスクーリーン・データを作って放映しながらの講演だったので、講演はだいぶ楽だった。しかし、準備は強烈に大変だった。何せ、自宅の本棚は整理が悪いので、毎日、スキャンする本を探しまくった。朝6時に起きて10時まで、夜は10時から1時頃まで、毎日パソコンとにらめっこだ。今日は、蕭々気が抜けている。


でも来週もあるので、そんなにのんびりもしていられない。次回は「齊藤昌三の廃物を利用したエコで美しい本」と題しての講演だ。このテーマは、昨年神奈川県立図書館で講演したので、ある程度資料がまとまっているので、ちょっと気持にゆとりがある。


今月中に原稿用紙400字×30枚で、「恩地孝四郎の装幀」について書くという余暇の仕事?が残っている。これも昨日の講演で、だいぶプロットが固まってきている。


恩地孝四郎竹久夢二『春の巻』を購読して感動し、夢二宛てに手紙を送っている。この手紙が縁で、夢二と恩地の親交が始まり、この出会いが恩地のその後の方向を決めることになる。恩地にとっては人生を左右した大事な手紙だ。そんな恩地の手紙が、竹久夢二『夏の巻』に掲載された。この全文が読みたくて、『夏の巻』を古書店で探してみたが、けっこういい値段が付いている。買うべきかどうか悩んでいる時に、ふと本棚から取り出した「本 特集・恩地孝四郎」NO.4(麥書房、昭和39年5月))に、手紙の全文を見付けた。


それは「私は学校の帰りを親しい友──やはりあなたの絵が好きな──と肩をおし合って『夢二画集』を見ながら九段の坂を富士見町へ歩いていたのでした。家へ帰って私は妹と顔をよせて画集を見たのでした。妹も私とおなじようにあなたの絵を懐かしんでいるのです。来てゐた妹の友達も、亦その様でした、私が(ペーヂの紙を)切ってから持ってきてあげると云っておいて、外に用事をしてゐました。その時、その『友」はさいそくしたのでそう思ったのです。私はなんだかあなたがなつかしいのです。私はこの画集を得たのを心から嬉しく思ってゐるのです。『あんなものさへ持つてゐれば喜んでゐるのだナ』と母はいひました。私は何だか、手紙したくなったのです。私は初めはこの集についての心づきをいふつもりだったのでした。それにこんなことになつて了つたのです。けれど臆病な私には手紙を未知の人に送ることが、恐ろしい様な氣がするのです。私は初めの心に帰ります。
本屋のガラス……」と、青春のラブレターの様な書き出しではじまる1,569字の切々たる思いをしたためている。

「夢二宛て恩地孝四郎の手紙」(『夢二画集夏の巻』洛陽堂、明治43年、復刻版)、掲載しやすいようにレイアウトは変更しています。