外国での水彩絵具はいつごろから普及し始めたのかというと、斎藤泰三『英国の水彩画』(彩流社、1987〈昭和62〉年)によると「十八世紀も八〇年代に至りリーヴス兄弟が固形絵具を発明し、その改良の口火が切られることになった。十九世紀に入ると、一八〇五年にロバートソンなる絵具屋が、触媒としてのこれまでのアラビアゴムの中に、粘着性を与えるために蜂蜜を一部混ぜることを考案した。固形絵具は、年数が経ったり暑い気候のもとでは、乾き切って、なかなか水に溶けなくなったり、日々が入って砕けて粉末になって散ってしまうという欠点が


さらに「改良の次のステップは、この棒状の固形絵具を、現在のように小さな皿に分割しておくことであった。これにより、絵具箱にも入りやすくなって、絵具の容器として小さな磁器製の皿なども作られた。ガーティンの師のデイズは、厚紙で作った小さな型の中に、絵具を保存していたようである。」と、現在使われているような、固形の絵具が原形が完成されていった。


「しかし、この水彩絵の具の改良の歴史のなかで、何よりも効果的であったことは、『湿った絵具』即ち常に「軟らかいままの絵具』ヘの改良であった。これは顔料に、更に多くの蜂蜜かグリセリンを入れることによって得られるものであった。いままでの固い絵具では、なかなか水に溶けなかったから、使用するときは、絵具の一部を砕いて水に溶かしておいたりしたのである。」と、何やら、日本画絵具を思い起こさせる。


「しかし軟らかい絵具は、すぐに筆に取り上げ、紙に移すことができた。この発見は、当初、フランスで行われたもののようであるが、ウィンザーニュートン商会が更に改善を加え、実用性のあるものにした。このウィンザーニュートン商会は、一八三二年んい創立されたもので、これが現在、著名な英国画材メーカー、ウィンザーニュートン社の前身である。更に、この商会は、この湿った絵具をチューブ入りにすることに成功し、ここに、ほぼ現在あるような絵具が出来上がったのである。」と、水彩絵の具の誕生及びその発達史を、見事に書き記してくれた。



大貫伸樹画「固形水彩絵の具」