誰が描いた絵なのかを判断するときには、さし絵の隅にかかれた落款(サイン)で判断する事が多い


しかし、この落款が意外に曲者で、よく似た落款が誤解を招きやすい。それもそのはず、名前が「ま行」で始まる人の場合はほとんどが「m」の文字を使う事が多いのだから。


そうではなくとも、よく似た落款はある。例えば有名どころでは、下に並べた落款のうちどれが竹久夢二の落款なのかわかりますか? 夢二の場合もどこから来たのか理解しづらいが、なぜこのような形になったのかというと、本名の茂次郎(もじろう)との関係があるのかも。





上から順に、竹久夢二、須藤しげる、一木トン(弓偏の字)。須藤しげるはそのまま「しげる」の「S」ですが、わからないのが一番下の一木トン。


多分「いちき(ひとつぎ)とん」と読むのだと思いますが、そうだとするとこの落款は「い」「ひ」「と」「i」「h」「t」などのイニシャルをもとにデフォルメしたりするものだと思いますが、「の」の逆さまのようなこの文字はいったい何なんだ。なかなか発想の原点をつかむ事ができない。


いまのところ、「ひ」の略字ではないかと推察しているが、根拠も脈絡もなくいまいち自信が持てない。いっそ須藤しげるのように真ん中で二等分してくれれば、白い部分が「い」と読めるのだが。
落款の解読は製作者との謎解き合戦のようだ。