献本が次々に送られてきて秋を知る

先週紹介した恵美嘉樹『全国「一宮」徹底ガイド』もそうだったのだが、今回送られてきた
・飛鳥圭介『おじさん図鑑』(のべる出版、2007年10月)定価:1400円+税
も、普段使っている名前とは異なる名前・ペンネームで書いている。



私が北海道新聞に連載したときに、斡旋してくれた恩人なのです。この時の連載がなかったなら、私は今のように文章を書くことなどなかったのではないかと思われるほどです。美大は卒論もないので、文章を真剣に書くなどという習慣が私の過去の生活の中になかったんですね。


この『おじさん図鑑』は、最初から腹を抱えて笑わせる内容の連打連打だ。かつて、おばさんを「おばたりあん」などといって、中年女性をバカにした本がありましたが、それの「オジタリアン」版にちょっぴりおじさんの悲しさなども加わって、時々ジーンとくる本だ。だからといって、これを読んでおじさんをからかってやれなどと、不埒な動機で読まないでください。不景気なときにはせめて楽しい本でも読んで笑いながら楽しい日が来るのをじっと待ちましょう。


まだ、読み終わってはいませんが、パンチの効いた内容の一部を転用してご覧に入れましょう。著作権の侵害だ、なんて言わないで。


「念力……おじさんが歩道を歩いていると後ろから鼓膜が破れそうな爆音を発したオートバイが、急スピードで迫った。……すごいエンジン音だ。思わずおじさんは振り返った。ヘルメットもかぶっていない高校生ぐらいの若者が、さも得意そうな表情で、おじさんを小ばかにしたようにちらりと見た。


『うるさいぞ!』おじさんは怒鳴ったが、聞こえるわけがない。……『お前みたいなヤツは、事故でもなんでも起こして、死んでしまえばいい!』とおじさんは内心で強く思い、そして念じた。するとどうだ。ガシャーン、と鋭い音がして、前方でそのオートバイが停車していたトラックの後部に突っ込んだのだ。


若者は、ポーンととばされ路上にたたきつけられた。おじさんは一部始終を目撃したのだった。初め、ぼう然として立ちすくんだが、すぐに気がつき、現場に向かって全力で走った。『頼む、助かってくれ。死んでしまえって思ったのは、ウソだよ。おれが悪かった。あんなこと思わなければ……』


若者はフラフラと立ち上がり歩道にあがった。『あ、助かってよかった!』走りながらおじさんは泣いていた。」


ついでにもう一つご紹介します。
「遠吠え……《略》…と、おじさんの目の前にカップルが歩いている。酔眼をこらして二人を見ると、男はほぼおじさんと同年配の中年男で、女はその娘世代とも思える若さだ。「なんだ、こいつら」おじさんは二人の後を追いながらぶつぶつつぶやいた。一件のホテルのまえで立ち止まり、中年男が女の手を引っ張るように中へ入ろうとした。女はちゅうちょしている。あわや落花狼藉、これがだまっていられようか。おじさんは激しい嫉妬と、名状しがたい怒りにかられて、大声で叫んでしまった。「こらあ、お前はなんということをしてるんだ!やめないか、恥を知れ、恥を!」二人はビックリしておじさんを見つめた。……」


つい、やっちゃうんだよね、おじさんは。最近では「ツーショット」などというが、おじさんはやっぱり「カップル」だよね。結果はご購読して楽しんでくださ〜い。『おばたりあん』のようなヒット作になりますように、パン、パン!!