大正時代にも装飾文字のタイトルが


岡本帰一のイラストが良くて購入しておいた『ガリバー旅行記』(冨山房大正11年4版、初版=大正10年)だが、タイトル文字も図案文字を使っている。



巻末広告にはシリーズ本の写真が載っていて、岡本帰一装丁『イソップ物語』はかなり見事な図案文字のタイトルが用いられている。購入しようかな、とネットで調べたら、150,000円とか100,000円で販売されているので、あっさりあきらめた。15万円だよ。大正10年にこれほどの遊び心一杯の図案文字を描いていたとは、さすがの岡本帰一だ。翻訳本の挿絵をたくさん描いているので、洋書もたくさん見ていたのだろうと推察する。それにしてもどんな本を参考にしていたのか、なんとか初山滋のこの文字のアイディアソースを追求してみたいよね。



装飾図案文字というのは、書体見本が先にあったのではなく、この本のように絵本作家や装丁家が輸入書をみて作り出したのではないだろうか。ブームの切っ掛けが装丁だとしたら、これは「キネマ文字」ではなく「ブックデザイン文字」と呼ぶべきなのかもしれない。そうなると「キネマ文字」の歴史がひっくり返されてしまうかもね。


もう1冊
童話作家協会『日本童話選集』(丸善昭和5年)装丁挿絵を担当したのが初山滋で、たくさんの挿絵が本文中にたくさん挿入されていて、その見事さに見せられてだいぶ前に購入しておいたものだが、この見返しの図案文字が見事なので紹介したい。