創元社版『機械』の異装本?

創元社版『機械』(昭和10年3月15日、初版)異装本? を入手
昨日までは林哲夫さんのHP『佐野繁次郎の装幀』に掲載されている創元社版『機械』再版の話をしてきましたが、今日私の手元に届いた創元社版『機械』初版と同じ装丁なので驚いた。


つまり、こういうことだ、私のところには初版が2冊揃ったことになるが、この2冊は本来同じジャケットのはずなのに、写真のようになぜかそれぞれ異なっているのだ。後から届いた『機械』(B)は初版であるのもかかわらず、ジャケットだけは林さんのところでは再版とされている『機械』(C)と同じジャケットなのだ。



単純には、初めから手元にある初版の『機械』(A)が、売れなかったのか書店から版元へ返本されてきて、再度市場に流通させるときに、奥付は初版のままで、再版用に新たに書き変え用意されていたジャケット(B)に掛け替えて流通させたものと思われる。


「本の手帳」2号に掲載されている田中栞横光利一『時計』再版奥付の謎」に書かれているような、初版の奥付の部分1枚だけを切り取り、再版用に用意してある奥付と張り替えて再度市場に流通させるようなことが行われることがある。この1枚だけを見事にきれいに張り替えてしまうことを「一丁切り替え」という。



何はともあれ、初版だと思って注文した『機械』だったが、どういうわけだかずっと探していた再版と同じ装丁のものが見つかったんだから、なんともラッキーな話です。


●『機械』(A)タイトル文字のエレメントに使われている角度を解析



タイトルに下図に使用したのではないかと思われる角度の補助線を書き入れてみた。水平、垂直の線のほかに約55度の傾斜を基本にした線に沿って文字のエレメントが構成されているのがわかる。


製図器を用いて書いたのではないと思われるが、見事に平行線を利用しているということは、しっかりとした計画のもとに作図されたものではないかと推察される。