佐野繁次郎の装丁の傾向

佐野の装丁は今でもかなり人気があるようで、林哲夫さんや西村義孝さんの他にも、2003年に「SANO100 佐野繁次郎とその装丁展」(恵比寿「ユトレヒト・ホンデルト」)を開催したメンバーのかわばたさんや葉田さんの他、小さな図録にエッセーを寄せている市川慎子海月書林)さんや岡部史絵(ユトレヒト)さんたちも佐野に魅せられてしまった人たちだ。


佐野繁次郎の装丁には、観てすぐに佐野が装丁したんだな、ということがわかる際立った特徴がある。それをオリジナリティというのだろうが、その特徴一つは挿絵・装画である。クロッキー風のものから、タブローのエスキース(下絵)と思えるような水彩等々、そのどれからも画家佐野の真骨頂を見ることができる。





装丁では布を貼込んでいるものが多いコラージュ(パピエコレ)も、佐野ならではのものだ。ダチョウの絵のように具象画にも布などが貼込まれて半具象として斬新さをだしている。池田満寿夫安野光雅などこの技法を使う装丁家がいないわけではないが、数は少ない。




もちろん、装画だけではなく、文字にも特徴がある。文字だけで構成しても充分絵になる。
佐野の文字にはそんな絵としての力がある。



これらの要素が総合的に働きかけ佐野の装丁らしさを作り出している。

たくさん並べた目論見は、これらの要素の中から特に佐野流の文字を見て欲しいからだ。こうやってたくさん並べて見ると佐野が書いたとされている創元社版『機械』初版の創作文字がいかに異質であるかがわかるでしょう。


やればいつでも出来るのだろうが、佐野は『機械』のような几帳面に書いた文字をあまり好まないのではないかと推察するのは、この辺に根拠がある。
ここに掲載した書物以外でも、本棚に詰め込んである百数十冊の佐野の装丁本の殆どは、今回掲載したような類の文字の装丁が多い。