櫻井書店本、鈴木朱雀装丁、北島春石『ひとすぢ路』

shinju-oonuki2006-10-06

鈴木朱雀(すずき すじゃく1891-1972年、1920年第2回帝展に「吟鳥」入選。)装丁、北島春石『ひとすぢ路』(春江堂、1923[大正12]年)が届いた。イタミ本となっていたので覚悟していたが、表紙1のヒラの部分も函も、とにかく及第点だ。


ネット通販はほとんど画像がないので、知らない本を購入するときは一か八かの博打のようなものだ。おまけに、料金前払いの時は本が届くまでに1週間ほど時間がかかる。顧客サービスに無頓着すぎる。さらに、メール便は使えず振替口座もない古書店から購入するときは、本代の外にかなりの出費をしなければならない。前払い、振替口座なし、メールなしの3点セットを看板にして大手を振っている古本屋は商売やめちまえ。顧客サービスをなんと心得る!!

ちょっと脱線してしまったが、朱雀、春石そして櫻井均が加わって、この見事な装丁の本がつくられたのだ。以前も紹介したが、やはり朱雀、春石、櫻井のトリオで作った『女の誓』(春江堂、大正12年)といい、今回の『ひとすぢ路』といい装丁の出来はかなりのもので、ひと目見ただけで「胸キュン本」を通り越して、2階級特進の「抱きしめ本」だ。


この頃の体験が櫻井書店を創業するためのあらゆる意味での礎になっていた事は間違いない。櫻井書店を創業してからもずっとお世話になる鈴木朱雀なのだが、この本にはどこにも名前が記されていない。裏表紙のサインがなかったら朱雀の装画であることを確認する事は出来なくなって仕舞うところだった。この本がでたときの朱雀は若干32歳の青年画家だが、帝展に入選している画家なんだから、活字で名前を掲載してやるべきだったのではないのかな。

櫻井は作家に対しては徹底して腰が低いが、装丁家に対しても同様にしていたのであろうか?
当時櫻井が付き合っていた人達のエッセイなどで、櫻井の人柄を書いたものが残っていないかな?