これを恩地の装丁だと見分けられる?

shinju-oonuki2006-03-03

写真上左が大佛次郎『宗方姉妹』(朝日新聞社、昭和25年)のジャケット(カバー)で、右が表紙である。このジャケットを古本市で見かけて、恩地孝四郎の装丁であると判断するのは難しいだろう。私は、平体のかかった創作文字が、ただものではないなと思って手に取ってみた。上下の空間があるのに、なぜわざわざ平体をかけたのかが、理解できずに、これは普通のデザインではないなと思ったからだ。
 
恩地とは思わなかったが、だれか名のあるデザイナーがやったにちがいない。そう思いながらジャケットを外してみると、なんと表紙には見事な装丁が施してあるではないか。早速、目次などに装丁者名を探し、恩地の名を確認することが出来た。『恩地孝四郎 装本の業』にも表紙の写真が掲載されていたが、ジャケットは、外して撮影したのか掲載されていない。
 
よく学術書などで編集者が装丁するときに、タイトルと著者名だけの装丁をするが、こんなしゃれたことを考えた装丁はないと断言する。それは、一応市民権を得たある程度型にはまったものでないと容認できない編集者と、誰かがやったものと同じものを作るのを良しとしないデザイナーとの感性の違いでもある。この本のたった4文字のタイトルにも恩地の創作に対する強い主張を感じないわけには行かない。
 
同様な装丁として、丹羽文雄『爬虫類』(文藝春秋社、昭和26年)があり、恩地の一つのスタイルのようなので覚えておこう。ちなみに京王デパートの古書市で500円で購入した。