恩地孝四郎が、『アトリエ美術大講座』に「新傾向図案構成法」を執筆

shinju-oonuki2006-02-27


『アトリエ美術大講座 図案創作法2 図案科』(アトリエ社、昭和11年12月)に恩地孝四郎が、「新傾向図案構成法」を執筆している。「凡て藝術である以上、新しいといふことの缺けてゐるものは既に価値がない。それらはたゞ存在してゐるだけのものにすぎない。生きてゆくもの成長してゆくものであってのみ、藝術は眞に有効である。未来に働きかけるもののみが有効である。或は従來なかったものの創成、或は意識せられざりしものの認識とその顯現、或は刻々に変貌しゆくその追及。」と、水を得た魚のように、恩地の舌は滑らかだ。
 
巻頭で取り上げている作品は、ピカソガボ、ブラック、モンドリアン、レジェなどなど、かつて恩地が自分の方法論として取り入れようとした美術運動のリーダー達が、勢ぞろいしている。本文中の写真も鳥の羽の顕微鏡写真や幾何学的錯覚の例など、全く新しい最先端の資料で前衛美術の基礎を熱く語っている。
 
写真は、「方向の統制に對する力の均等作例」と題する幾何学形態の持つ力とその力の働く方向性等を解説して、幾何学的図形によるバランスの取り方を説明している。
 
当時ここまで説明できる人は恩地しかいなかったのではないだろうか、と思われるほどに踏みこんだ解説である。