ビアズレイの挿絵を取り入れた雑誌の装丁 

『読書雑誌』(日本読書組合、昭和21年7月創刊号)は、ビアズレイの装画を取り入れた恩地意匠の表紙である。恩地はアールヌーボーにはあまり興味を示さず、前衛美術に走ったものとばかり思っていたが、どうしてどうしてしっかりと勉強していたようで、驚かされた。
 
「表紙カット」と題する短文が掲載されているので、転載してみよう。「黒と白との世界に生きて、特異な畫風を以て知られるオーブレイ・ビアズレイによる作品の一つである。ビアズレイは一八七二年八月二十一日、イングランドのブライトンに生まれ、胸を病んで、九八年三月十六日メントーンに夭折した。
 
モデルも、自然の描寫も、また主題すら不必要であったといはれる彼の作品は、彼の記憶と想像力との産物であったが、その知性は直観的にあらゆる民族、すべての時代の藝術的表現の聖新を把握しないではおかなかった。エジプト人の、インド人の、ないし日本人の、そしてまたゴテイックからルネッサンスバロックロココ、初期ヴィクトリアの各期から超現代派に至るそれは、彼の鋭い芸術的理解力のまゝに受け入れられて、独特な彼の墨絵となった。
 
世界的でありまたある程度通俗的にならなければならなかった彼の藝術の秘密を、マックス・リーベル・マンは『人間は藝術について何等理解せざるも、尚ほ偉大なる藝術のエキスパートたり得る』と説明してゐる。」と、少々しつこい文章だが、恩地が、ビアズレイに深く興味を持っていたことを知ることが出来る文章である。
 
今回紹介した2点も『恩地孝四郎装本リスト」に新規追加されるデーターである。