使い古しの番傘だから美しい

 
この本の魅力は、何と言っても番傘として使われていた頃の面影が残っていて、なおかつその番傘に描かれた模様や文字などがうまくデザインとして取り入れられていることであり、その善し悪しがコレクターにとってはもっとも気になるところらしい。
 
そんなふうにコレクターの目で眺めてみると、今回入手した『書痴の散歩』は、頗る満足のいく装丁だ。いかにも番傘らしい部分が見事にトリミングされていて、まるでこの本のために描いたイラストのようで美しい。使い古しの番傘のテクスチャーがこの紙ならではのいい味を出しており、「胸キュン本」「頬すり本」を通過して、飛び級しての「添い寝本」だ。武蔵大学に貸出した本より、こちらの方が美しい。
 
番傘の骨があたる部分には、外部から黒い漆を塗って補強しており、それが、番傘を開いた時には、模様となり、畳んだ時には、黒く輝く筒のようになる。傘職人もいい仕事をしているねえ。