元の資材のデザインが生きている

 
さらによく観察してみると、太く黒い線で区切られた5センチ四方ほどの升形の中に、光るドーナツが一つ入っている。それぞれの四角のスペースには番号がついている。この番号は、蚕の部屋の番号なのだろうか。つまり、この太い線は装丁の時のデザインとして描かれた線ではなく、廃物を利用したために、以前の印刷がそのまま残っているということか。
 
それにしては、デザインが良くまとまっている。表紙の上の方には福島県の養蚕業者の住所や名前や「産卵日 九月八日」などと書いてあって、この小さな文字が、画面を引き締めており何ともおしゃれな感じに仕上がっている。題簽に著者名のバックに筆のタッチで金泥が塗られているのは、蚕が金をもたらしてくれるというような象徴的な意味合いでもあるのだろうか。