贅沢な作りの本、福田昇八訳、エドマンド・スペンサー『妖精の女王』

造本設計・デザインを担当した超豪華な本、福田昇八訳、エドマンド・スペンサー『妖精の女王』(九州大学出版会、2016.10、定価30,000円〔税別〕)の献本が送られてきた。


 書店に並ぶような商業出版物では滅多にお目にかかれない贅沢な作りになっている。
 まずは、貼り函の天地に赤い布が貼ってある。普通は1枚の紙あるいは布で包むようにするのだが、もう一手間かけて、天と地に平の部分とは別の布を貼った「天地布貼り函」。表紙は、「継ぎ表紙上製本」といって背の部分の黒い紙(ロンニックGP)と、平の部分の赤い紙(ウーペケネス プラム)とに資材を変えて、平の部分でつないでいる。さらに平の写真は表紙とは別に印刷して、空押しして凹んだ部分に手で張り込んでいる。本文紙の綴じは、今はやりのノリで綴じる網代綴(あじろとじ)ではなく、長持ちして再製本も可能な「糸かがり」で綴じた。



 
 今までも、『狩久全集』(皆進社、平成25年)では継ぎ表紙を採用。東京美術倶楽部編『市井展の全貌 戦後編』(八木書店平成27年)では貼り題簽(だいせん)を採用するなど、個別には手間のかかる製本を採用させてもらってきたが、『妖精の女王』はこれらを集大成したもので、私のブックデザイナーとしての40数年間の仕事の中ではで最も贅沢な作りの本だ。