2005-07-23から1日間の記事一覧

口は悪いが

「……失禮な話だが、翁の筆になったものでも、殊にこの種のものは多くは賣れないものであらうが、十人でも百人でも賛成者があったら充分だと思って、……」と、真実とは言え全く失礼なことが書いてある。言うだけのことがあって、本文中に掲載された多色すり木…

売れなくとも長生き

例によって齋藤昌三の「跋」が巻末に掲載されているので覗いてみよう。「一般の出版物には大抵生命が限られてゐるが、随筆には無限の生命がある。只前者には流行り廃りがあるが、後者にはその心配がない代り、讀者はほんの一部に限られてゐる。」という書き…

元の資材のデザインが生きている

さらによく観察してみると、太く黒い線で区切られた5センチ四方ほどの升形の中に、光るドーナツが一つ入っている。それぞれの四角のスペースには番号がついている。この番号は、蚕の部屋の番号なのだろうか。つまり、この太い線は装丁の時のデザインとして描…

光るドーナツの正体は?

これがキラキラ光る物体の正体のようだ。それにしても種紙とは何だろうか。広辞苑を引いてみると「蚕が卵を産みつける紙。蚕卵台紙。蚕紙。」とある。ということは、このキラキラは、卵を産みつけた後か? そういえば蝶々や蛾の卵は、小さな粒のようなものだ…

きらめく表紙

山中笑『共古随筆』(温故書屋、昭和3年)の表紙をよく見ると、直径1mmほどのキラキラ光る点がたくさん集まって、直径4cmくらいのドーナツ形を形成している。見返しに「読者の方に」として刊行者の坂本篤が、「表紙は蠶(*かいこ)の種紙を利用したものです…