大貫伸樹の続装丁探索(『魯庵随筆 紙魚繁昌記』)13

shinju-oonuki2005-07-19

齋藤昌三、柳田泉編集『魯庵随筆 紙魚繁昌記』(書物展望社昭和7年)は、齋藤が装丁した書物の中では比較的「ゲテ度」が低いように見える。裏表紙に紙魚(しみ)の拡大図を銀色で印刷してある。背には、和本の本文ページを開いて表紙に使ったため、小口部分に印刷された魚尾やタイトル、巻数、葉数などが、そのまま新たな書物のタイトルのように見える。本当のタイトルは朱色で印刷してあるが、もともと印刷されていた文字などに邪魔されて、よく読めない。
 
表表紙には、和本のような題簽が貼ってあり、ここで初めてタイトルを確認できる。今ではとてもじゃないが、このような装丁は通用しない。背文字は、流通段階で最も大切な要素であるので、可読性を要求されるからだ。