シャガは、日本に古くから自生し、 人家近くの雑木林や竹林のやや湿った林床に群生する、白く清楚な一日花を次々に咲かせるアヤメ科・アヤメ属に分類される常緑性の多年草です。西東京市内でも田柄川用水跡の暗渠の周りや東大農場などで見ることができます。
日本に自生するシャガは三倍体(細胞の染色体の基本数の3倍の染色体数をもつ倍数体。人為的処理で比較的容易に得られ「種なしスイカ」はこれを応用したもの。)なので不稔性で種子を作りません。そのかわり、横に長く這う地下茎から細いストロン(匍匐枝)を出しその先に新芽を作って旺盛に増えていくので、大きな群落をつくるのが普通です。
シャガは漢字では「射干」とも書きますが、これは中国では檜扇(ヒオウギ)を指す言葉。別名を胡蝶花(コチョウカ)ともいいます。「射干」という妙な名前は、サンスクリット語の「シュリガーラ」が「野干」「射干」「夜干」と漢訳されたものといわれています。シュリガーラとは尸林(しりん 死者を火葬した後、亡骸を放置する特定の森)に棲み、死体を貪る魔獣で、一説ではジャッカルのことともいわれていますが、インドの殺戮と戦争の黒い女神カーリーの眷属で尸林をさまよい死体を食らう夜叉ダーキニーとも同一視されます。
シャガの花が屍体を食らう夜叉とは驚きですね。