山名文夫のサインだった「Я」

9月22日に、写真下左のドルジュレス『戦争の溜息」(新潮社、昭和6年)の函にある装丁家のサイン「R」の鏡文字(ロシア文字)のサインは誰のものか、という話を書いたが、目黒美術館で発行した図録にあった通り、山名文夫(やまな あやお)のサインであることがわかりました。



 ブログにアップして以後、ずっと気になっていたので、何かがわかるかもしれないと思い川端直道編『山名文夫AYAO YAMANA 1897-1980』(トランスアート、2004)を購入した。



 読み始めるとすぐに「…1920年代から30年代に描いた油彩はあるが、残っているものの数はいくらもない。私たちはロシア文字でサインされた、この一枚の油彩に山名のモダニズム画家としての出発点を見出すことができる」(8ページ、
福原春義「一枚の女性像から」)と記されており、山名は画家として活動していた頃やイラストレーターとしてデビューした頃は、山名の「や」や文夫の「や」に、ロシア文字の Я([ja])を当てて「ЯMANA AЯO」と記していたことが分かった。
 ロシア文字のサインがある「この一枚の油彩」とは写真上の山名文夫画「私達がリーザと呼んでいた薔薇の女」(1929年「第2回主情派美術展覧会」出品作)だ。



 他にも1920年代〜30年代のイラストのサインに「Я」や「AЯO」「ЯMANA AЯO」などのサインを使っていたことが分かった。

山名文夫:カット「途上」(『サンデー毎日』第5年第24号、1926年5月)




山名文夫:挿絵、牧逸馬吉祥天女の像」第2回、『女性』第11巻第2号、1927年2月)




山名文夫「THE LILY』(『揺籃』第2号、1921年5月)